ISO22000の概要

 

  1. ISO22000規格制定の背景
      (1) HACCPシステム
      (2) ISO 9000シリーズ規格と食品業界
      (3) ISO 22000制定へ
  2. ISO22000の特徴
      (1) PDCAサイクルの採用
      (2) 管理手段の選択による食品安全の確保
      (3) ISO 9001と同様の規格構造
  3. ISO22000の4つのポイント
      (1) 相互コミュニケーション
      (2) システムマネジメント
      (3) 前提条件プログラム
      (4) HACCP原則
      (5) ISO22000が目指す食品安全マネジメントシステム
  4. ISO22000の登場で何が変わるか
  5. ISO22000を導入することで期待できるメリット

1.ISO 22000規格制定の背景

(1) HACCPシステム

食品安全を確保するための技術的な手法として有名なのが、
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:訳としては”危害分析及び重要管理点”が一般的)です。

1960年代の米国におけるアポロ宇宙計画の際に開発されたこの手法は、
最終製品の抜き取り検査による安全性保証という従来の概念ではなく、
食品製造工程において明らかにした重要管理点(CCP)を確実に管理・制御することで、
最終製品の安全性を確保するという画期的なアプローチでした。

国際食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)との間に設置された
食品の国際規格を策定するコーデックス委員会は、1993年にこの手法を採用し、
HACCP導入のための指針が「食品衛生の一般原則の規範」の附属書として発行されました。

その後、HACCPの手法は、食品安全確保のための効果的な方法として各国に普及し、
我が国でも1995年に「総合衛生管理製造過程」として、
食品衛生法の中にHACCPの手法を用いた承認制度が取り入れられました。

 

 

(2) ISO 9000シリーズ規格と食品業界

一方、工業界を中心として1990年代から急速に普及したのが、
製品の品質保証のための規格であるISO 9000シリーズ規格でした。

ISO 9000シリーズ規格は、製品の品質保証の仕組みを標準化するという画期的な考え方と、
どのような製品・サービスにも適用できる柔軟性、第三者による審査登録制度という信頼性などから、
様々な業種・業態に広がりをみせました。

そして、1990年代半ばからは、食品関連企業においてもISO 9000シリーズを導入する組織が増え始め、
食品業界では、HACCPとISO 9000シリーズという2つの概念が融合していきました。

転機になったのが、2000年にISO 9000シリーズ規格が大幅改訂され、登場した
ISO 9001:2000規格(現在は2008年版が最新)です。
従来の”製品の品質保証”という概念から、”品質マネジメント”という経営の要素を
全面に押し出したこの規格は、産業界に支持を受け、食品業界を含め、さらに拡大していきました。

 

(3) ISO 22000制定へ

その一方、食品業界は、国内外において1990年代から2000年初頭にかけて
食品の安全性や信頼性を脅かす様々な事件・事故が発生します。

大規模食中毒やBSE問題、鳥インフルエンザ、産地偽装問題などがその例ですが、
食に関する問題はグローバルなテーマとして議論されることになります。

そして、2005年9月に登場したのが、“ISO 22000:2005 食品安全マネジメントシステム”です。
HACCPとISOマネジメントシステムの両方の概念を持ち合わせるこの規格は、
グローバル化した食の安全性に関する問題への一つのアプローチ方法として期待されています。

 

 

2.ISO 22000の特徴

(1) PDCAサイクルの採用

他のISOマネジメントシステムと同様、ISO 22000も、
Plan(計画)Do(実施)Check(監視)Act(改善)の“PDCAサイクル”の構造を採用しています。

従来のHACCPの考え方は、食品安全を確保する工程管理の仕組みとしては、
非常に優秀な内容であったのですが、このPDCAサイクルをまわして改善する“マネジメント”の考え方は、
必ずしも十分とは言えないものでした。

ISO 22000は、従来のHACCPの持つ食品安全確保のための技術的手法と
ISOマネジメントシステム規格が持つマネジメントの考え方をミックスした規格であると言えます。

 

方針Policy 経営者が食品安全に取り組む方針を打出します。
計画Plan 方針に基づき、目標を設定し、必要な経営資源
(組織、要員、施設、設備、環境条件等)を検討(計画)するとともに、
ハザード分析により、OPRP・HACCPプランの仕組みを確立します。
運用Do 確立したFSMSの仕組みを運用、必要な記録を残します。
チェックCheck 検証(内部監査及び検証プランに基づく検証)を実施し、
検証結果を分析した上で、
計画した内容が効果をあげているかを確認します。
改善Act マネジメントレビューを通じて、FSMSを改善・更新します。

 

(2) 管理手段の選択による食品安全の確保

ISO 22000はただ単に“ISO + HACCP”という規格ではありません。
その特徴の1つに、ハザード分析結果により、管理すべき食品安全ハザードを“HACCPプラン”と
“オペレーション前提条件プログラム(OPRP)”の2つの管理手段のいずれかを選択し、
管理する仕組みをとっています。

そのため、ISO 22000を導入した場合、「必ずHACCPシステムを構築する」というような必然性はなく、
結果的にOPRPのみを管理手段として採用する食品安全マネジメントシステムも存在することになります。

 

ISO22000管理手段の選択による食品安全の確保

 

(3) ISO 9001と同様の規格構造

ISO 22000のモデルとなったのは、品質マネジメントシステム規格であるISO 9001です。
そのため、下表の通り、その規格の章構成は非常に似ており、特に4,5,6章については、
ISO 9001をよくご存知の方であれば、比較的理解しやすい内容となっています。

【ISO 9001とISO 22000の章構成の比較】
ISO 9001 ISO 22000
1.適用範囲
2.引用規格
3.用語及び定義
4.品質マネジメントシステム
5.経営者の責任
6.資源の運用管理
7.製品実現
8.測定,分析及び改善
1.適用範囲
2.引用規格
3.用語及び定義
4.食品安全マネジメントシステム
5.経営者の責任
6.資源の運用管理
7.安全な製品の計画及び実現
8.食品安全マネジメントシステムの妥当性確認,検証及び改善

 

3.ISO 22000の4つのポイント

ISO 22000に基づく食品安全マネジメントシステムが、組織の目的に見合った系統立った
有効なものであり続けるために、そして食品安全マネジメントシステムを的確で
確実に運用し続けるためには、基本原理・基本原則に忠実であることが求められます。

ISO 22000の序文では、組織が食品安全に関する運営管理を確実に行い、
しかも、運営状況の向上・改善を促進するうえで重要な4つの方向性を示しています。

 

(1) 相互コミュニケーション

食品安全は、一つの組織のみで確保されるものではありません。
食品製造業であれば、原材料を仕入れる仕入先、加工委託を依頼する協力会社、
製品を納める顧客、あるいは行政や業界団体、消費者団体などもあります。

これら他の組織とのコミュニケーションが十分でないと、食品安全の情報が組織内に伝達されなくなり、
安全な食品が提供されなくなる可能性があります。

 

(2) システムマネジメント

従来のHACCPで必ずしも十分でなかったのは、マネジメントの概念です。
ISO 22000は、ISO 9001やISO 14001などと同じ“マネジメントシステム”であり、
経営の視点から仕組みを改善するというマネジメントの概念を持ちます。
仕組みの改善は、PDCAサイクルの考え方が基本にあり、
その仕組みをマネジメントする者のリーダーシップが求められることになります。

 

PDCAサイクル

 

(3) 前提条件プログラム

食品安全の技術的対策を考えるとき、最も重要なのが一般衛生管理と言えます。
ISO 22000では、これを前提条件プログラム(PRP:Prerequisite Program)として、
食品安全マネジメントシステムを構築する上で必要不可欠なものと位置づけています。
前提条件プログラムは、コーデックス委員会が定めている「食品衛生の一般原則の規範」や
各国での適正製造規範(GMP)などとして確立されていますが、
どの程度までの内容とするかは、組織の規模や業態、取り扱う製品
によって大きく異なります。

  • 建物・関連施設の構造・配置
  • 作業空間・構内の配置
  • 空気・水・エネルギー等の供給源
  • 廃棄物・排水処理
  • 設備の適切性、清掃、洗浄、保守、予防保全のしやすさ
  • 購入資材、廃棄物、製品の取扱い管理
  • 交差汚染の予防手段
  • 清掃・洗浄、殺菌・消毒
  • そ族・昆虫の防除
  • 要員の衛生


(4) HACCP原則

HACCPは、“予防”という考え方を基本にした食品安全のための技術的手法です。
ISO 22000では、HACCPの7原則、12手順の考え方を、ほぼそのまま要求事項として採用しており、
食品安全マネジメントシステムを確立する際には、HACCPの考え方が極めて効果的であることを示しています。

【HACCP(ハセップ、ハサップ)とは】

HACCPとは

食品の受入から加工といった一連のプロセスにおいて、予め想定される生物学的、化学的、物理的ハザードに対して、設定した管理手段を用いて発生や増殖を防ぐ、予防を中心とした管理手法

【HACCPの7つの原則・12手順】

  1. HACCPチームの編成
  2. 製品の記述
  3. 意図する用途の特定
  4. フローダイヤグラムの作成
  5. フローダイヤグラムの現場確認
  6. (原則1)ハザード分析の実施
  7. (原則2)重要管理点(CCP)の決定
  8. (原則3)許容限界の設定
  9. (原則4)各CCPのモニタリングシステムの確立
  10. (原則5)モニタリングにより特定のCCPが管理状態でないことが示された場合にとる修正処置の確立
  11. (原則6)HACCPシステムが有効に機能していることの検証手順の確立
  12. (原則7)以上の原則とその適用が適切に行われていることを示す、すべての手順や文書・記録の確立

(5) ISO22000が目指す食品安全マネジメントシステム

 

4.ISO22000の登場で何が変わるか

これまで、厚生労働省が進めてきた総合衛生管理製造過程(日本版 HACCP)では、
承認品目が限定されており、それ以外の食品を取り扱っている組織は、承認を得ることが出来ませんでした。
ISO22000は第三者審査を想定した規格となっており、すべての食品関連組織が取り組むことが可能です。

すでに ISO9001を取得している企業は、食品安全リスクを強化するために
リスクマネジメントのツールとして、ISO22000を活用することができます。

 

5.ISO22000を導入することで期待できるメリット

食の安全・安心は当然のこととして消費者や取引先から求められる今、
まずは安全な製品を提供しなければ消費者や取引先の感じる安心は提供できないといえるでしょう。
そのためには、安全な製品を実現するための仕組みの確保が急務といえます。

現場を中心とした従来のHACCPシステムではなく、組織全体で食品安全を追求する
システムであるISO22000を導入することにより、より強固なリスクマネジメントを
実践することが可能となり、その結果として顧客に対する安心の提供を実現することができます。

 

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